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最近読んだ本で、人生において何をやるかよりも、何をやらないかの選択の方が重要だという一節がありました。

そういえば、先日CDの棚を整理していたら、なぜか出てきたティルソン・トーマス(MTT)指揮「トスカ」のCD。

「MTTの振るオペラ?」

恐る恐る聴いてみましたが、普通のオペラのCDです。オーケストラが一番鳴る一幕最後も、特にティルソン・トーマスだから何ということもない。

ライナーノーツを見ると、この時ティルソン・トーマスは44歳で、初のオペラ全曲盤の録音だったとのこと。祖父母がニューヨークで劇場を創設したということもあり、彼は劇場に非常に親近感をもっていて、今後オペラでの活躍が期待されるというようなことが書いてある。

でも、その後のティルソン・トーマスはご存知のとおりのキャリアを選びます。

彼も自分のキャリアを模索していた時期があったということでしょうか。別の見方をすれば、普通の指揮者のように方々を客演したり、何でも振った時期があったから、今の彼にたどり着いたのかも知れません。

今の音楽づくりの方向性とかレパートリーは、自分やマーケットをシビアに分析した結果の選択なのでしょうが、つくづく賢明な選択だったと思います。


CDは1988年の録音。カレーラスが白血病から復帰した年に得意のカヴァラドッシを歌ったということで貴重とされているようです。
Puccini: Tosca Puccini: Tosca
Giacomo Puccini、 他 (2003/07/28)
Sony Classics
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うちでとっているクラシック音楽の雑誌の最新号の表紙がネトレプコだったのですが、思わず手を止めて見入ってしまいました。

写真の感じが、シャネルとかディオールのポスターみたい。特に眉毛とリップのメークが芸術的レベル。

モードが似合うクラシック音楽の歌手って、マリア・カラス以来のように思います。

あとカラスにあってネトレプコにないものって、聴いてすぐカラスだとわかる声や歌い口の個性と、栄光と絶望の劇的な人生くらいでしょうか?

この2つは、難易度が高いです。やはり伝説のディーヴァへの道は険しい!

ネトレプコと同じくらい歌がうまい歌手はたくさんいると思いますが、迫力あるプロ魂とか、こうしたモードが似合うスター性とか、目ヂカラなど、いろいろひっくるめると、やはり傑出しているといえるのではないかと思います。

昨年のフィガロのスザンナでも、黒い衣装に黒髪を短く切ったヘアスタイルが、演出の雰囲気にぴったりで、とてもスタイリッシュな印象を受けました(もちろん映像でしか見ていませんが)。そういうセンスも彼女にはあるのかも知れません。
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団は、指揮者とオーケストラのブランドづくりも巧みです。

1. 指揮者とオーケストラの協同関係

まず、彼らの表示は、

デイビスホールのデザインをモチーフにしたロゴ
SAN FRANCISCO SYMPHONY
MUSIC DIRECTOR  MICHAEL TILSON THOMAS

基本的にこの3つがセットです。

MUSIC DIRECTOR  MICHAEL TILSON THOMAS という表記は32文字もあって長いけれど、書く。

なぜなら彼らは、指揮者とオーケストラが共に音楽を作り出しているということをアピールしているからです。

だからKEEPING SCOREでも、オーケストラメンバーがティルソン・トーマスを「マイケル」と呼び、彼もまた「MY COLLEAGUE」と語っているシーンが何度も出てくるのだと思います。

2. アーティストの集団

サンフランシスコ交響楽団は、スーパースターがいないオーケストラです。パユもシェレンベルガーもいない。

でも、彼らはそれを逆手にとってアピールしている。うまいと思いました。

それは、100人のアーティストの集団だということ。

スーパースターがいないことで、100人の個々の貢献で成り立っているということが浮かび上がってきます。

パンフレットなどの構成をはじめ、KEEPING SCOREでも、ファミリーコンサートなどのトークでも、彼らは必ずティルソン・トーマスだけでなく、オーケストラメンバーにも語らせています。

ティルソン・トーマスは、あれだけ果てしなく語れるのだから、彼一人にしゃべらせて事足りるのに、あえて語らせている。

それにより、オーケストラメンバーそれぞれが見識をもったアーティストだということが伝わってくる。実際、目を輝かせて語っちゃうメンバー続出で、MTTから発せられる強烈な音楽バカ感(いい意味です。もちろん!)とは別のインパクトです。

今まで皆があたり前だと思っていた、オーケストラは何十年も研鑽を積んだアーティストの芸の集積なのだということをアピールする。ちょっと盲点をつかれた感じです。
サンフランシスコ交響楽団のウェブサイトを開いたら、今シーズンの残席チケットを期間限定でディスカウント販売していました(1/24~1/30まで)。気づくの遅すぎ!

すべての公演、すべての席種が55ドルと25ドルの2種類(通常は一番高い席が114ドル)。

これもスポンサー企業の支援を受けて、毎年やっているみたいですが、売り切ってしまうというガッツに感服。

試しに残席を見てみたら、見事に残り少ない。土日はsold outも続出。

4~6月のどれかに行きたいと思っていたのに、完全に出遅れてしまいました。

もともとサンフランシスコ交響楽団は定期会員の占める割合が高く、人気公演やいい席は会員が占めています。だからディスカウント販売をしても、会員に不満を与えることも少なく、その分はそっくり、公演に行ってみようか迷っている新しいお客さんの開拓につながるという訳です。

サンフランシスコは、東京みたいに多くのオーケストラが世界中からひしめき合っていないとは言え、人口約79万人(東京は1,265万人)の街で、ほぼ毎週水曜から日曜に一つのプログラムで4~5公演をやって、2,700人収容のホールを埋めてしまうパワーって、やはり特筆すべきものがあると思います。

それも彼らの音楽の魅力と、地道な活動の積み重ねでやってのけている。彼らはとにかくライブに来て聴いてもらうことを最重要視していて、「聴いてもらえばわかるから」と言っていますが、私も全くその通りだと思います。

*キャンペーンは終了しています(1/30)。
有名なオペラとかオーケストラの来日公演の案内を見て、チケットの値段が「こんなにするの?」と今さらながらびっくりしました。

私は、どうしても聴きたい、譲れないというもの以外は、こうした高価格の来日公演に基本的には行かないもので。

確かに日本にいながらにして、世界中のトップクラスの音楽をたくさん聴けるということは、すごいことだと思います。ソリストも本国ではありえないような豪華ラインナップだし、プログラムも高い評価を得ている自信作ばかり。これだけ来日公演が多くてもマーケットが成り立つということは、それだけニーズがあるということなのでしょう。

でも、オペラでもオーケストラでも、その音楽を生み出している都市や劇場と音楽は切り離せないものだと思うのです。来ているお客さんや劇場の空間とか空気も含めたものが作品になるというか。

だから、そうした部分を切り離してしまうことは、彼らの文化や音楽の上澄みである商品部分にしか触れていないのではないかと思うわけです。

たとえ、来日公演みたいにスターが出なくても、歌手やオーケストラが失敗しちゃっても、トンデモ演出にがっかりしたとしても、それを生み出している都市で、劇場の空気を感じながら、どんなお客さんが来ていて、どんな反応なのかとか、いろいろ観察しながら音楽を聴くのは、本当に楽しい。

来日公演をネガティブに評価するつもりはありませんが、やはり上澄みだということの認識をもって、それだけで断定してしまわない余裕みたいなものが必要なのではないかと思います。
2月といえば、中国のお正月「春慶節」。サンフランシスコ交響楽団でも、新年をお祝いするコンサートがあります。プレス発表を読むと、このコンサート、シーズン中の最も大きなイベントの一つのようです。

さすが、地域密着。全米最大規模のチャイナタウンがある街ですから。

どんな内容かというと、一言でいうと、中国系の人もそうでない人も、ファミリーで参加して皆で祝うというもの。コンサート後にイベントがあり、飾り付けられたホワイエで獅子舞(?)が繰り広げられ、中華菓子がふるまわれる。くじや占いもあります。デイビスホールのホワイエは総ガラス張りで、オープンなスペースだからイベントにもぴったり。

コンサートの方は、アジアと西洋の融合といった感じで、中国系指揮者に14歳の中国人ピアニスト、伝統楽器のアーティストも登場。

通常のコンサートは、チケットが25~110ドルしますが、このコンサートは20~60ドルに抑えられています。

コンサートの後には、もう一つイベントがあり、すぐ近くのCITY HALLにシンフォニーの支援者を集めての豪華なディナーパーティ。こちらは中国系デザイナーのファッションショーと組み合わされていて、ファンドレイジング(資金集め)を兼ね、チケットは300~500ドルという設定になっています。

これを見ただけで、企画力に目を見張るものがありますが、彼らはこのようなイベントを、クリスマスの子どもを集めたコンサートや、ニューイヤーなどでもやっていて、それぞれが年中行事として固定ファンを得ている模様。またこれらがボランティアによって支えられているというのも特徴です。

この春慶節コンサートだけでも、いくつも表彰されているサンフランシスコ交響楽団。いろいろな記事を見ていたときに、サンフランシスコといえば、昔ゴールドラッシュ、今はシンフォニー?というように書いてあるのを見つけましたが、本当かも。

プレス発表はこちら
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の音楽づくりは、洗練されていてハイセンスですが、これとは対極にあるロシアのオーケストラも好きです。

モスクワ放送響など来日すると、つい出掛けてしまいます。そして音楽を聴くと、「うわっ、あか抜けない」と思うのですが、かっこ良くなくても泥臭くても、

「これが、俺たちの音楽さ!」

という感じで、堂々と胸をはって演奏している姿を見ると、もうそれだけで曲の冒頭から胸が熱くなります。

これと同じ感覚を、チェコでビールを飲んだときに感じました。

日本のビールみたいに冷やしていないし、雑味がいっぱい感じられるのですが、それが逆に何とも言えない独特の味わいになっている。

翻って日本のビールは、コマーシャルでやっているように、2つくらいのキーワード(コク、キレ、すっきり、まろやか等)で見事に言い当てられる味だと思います。余分なものは取り除かれていて、目標に向かってよそ見をしない感じ。そして技術力があって、品質にもばらつきがない。

これは、日本のオーケストラから受ける印象とも似ているような気がします。

でもひょっとしたら、余分なものだと判断されたものの中に、個性とか精神的な豊かさにつながるものがあるのかも知れません。

ビールの味もオーケストラの音楽も元を辿っていくと、日本社会の多様性に対するスタンスとか、マスとしての嗜好みたいなものに行き着き、それが反映された諸現象だから似ていると感じるのかなと思います。
ランチェスター経営の本を読んで、オーケストラも同じ発想ができると思いました。

他よりも競争力のある商品=核になるレパートリーの存在

ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団で考えてみると、第一はやはりマーラー。

プログラムの紹介で、「It’s trademark」というだけで、すべてが通じてしまうってすごいことだと思います。ここではマーラー演奏では世界一かも?というレベルまで突き抜けているという点がポイントでしょう。

第二の核は、いわゆるアメリカものでしょうか。彼らのアメリカものは、本当にオープンで躍動感にあふれていて魅力的です。

これはやはりティルソン・トーマス(MTT)が、若い頃から作曲家本人との交流の中で培ってきたものが大きく、他の追随を許さない。また彼もアメリカ音楽を伝承していくということを非常に重要視しているように思います。

これらの中には、当然現代曲も多いのですが、聴く人に「面白い」と思わせるところが、他が容易にまねできない競争優位性なのだと思います。
ティルソン・トーマス(MTT)の音楽には、その良さが発揮されるものと、そうでもない曲があるという点を指摘しました。という訳で、今わが家は、ティルソン・トーマスのCDだらけ。意外なものが「これはイケル」だったり、やっぱり「はずれ」だったりして、実に楽しい。

そんな中、自信をもっておススメできるのは、

チャイコフスキーの交響曲第1番「冬の日の幻想」

チャイコフスキー : 交響曲 第1番「冬の日の幻想」 / ドビュッシー:管弦楽のための映像 チャイコフスキー : 交響曲 第1番「冬の日の幻想」 / ドビュッシー:管弦楽のための映像
トーマス(マイケル・ティルソン) (2000/08/23)
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民族的なリズムの躍動感、流線形の音楽、フェアリーな感じといい、こんなに彼のよさが発揮できる曲もないと思います。

録音は、1970年26歳のときのボストン響とのもの。MTTは登場したときからMTTだったということがよくわかる、素晴らしい演奏です。

ライナーノーツに、24歳のマイケル青年が、ボストンに登場したときの様子が詳しく書いてあります。

ティルソン・トーマスは、この曲を今シーズン4月にサンフランシスコ交響楽団と演奏する他、ルツェルン音楽祭にも持っていく予定。

ボストン響から30年以上経った今、この曲をサンフランシスコ交響楽団と、どのように聴かせてくれるのか、非常に興味深いです。
3月のロンドン響は、ティルソン・トーマス(MTT)が登場です。そして、オープンリハーサルがあります(3/7)。

ロンドン響のウェブサイトには、「ティルソン・トーマスの傑出したコミュニケーターぶりを直接見られる貴重な機会」であり、「好奇心をそそられる」とあります。

やはり、皆注目するところは同じ。

このオープンリハーサル、なんと無料なのですが、希望者多数が予想されるため要予約。見たい!

曲はアメリカものとマーラーの4番(3/9のプログラム)。今回は、この他に「復活」(3/11)をやります。チケットは完売間近。

ロンドンの皆さんも、ティルソン・トーマスのマーラーを聴きたいみたいですね。

ロンドン響ウェブサイト
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団は、日本での認識のされ方と、海外での評価にギャップがある訳ですが、他にもこういうケースはたくさんあるに違いないと思っていたところ、1/19の日経夕刊のディスクレビューに、

白建宇(クン=ウー・パイク、1946年生まれ)は、パリを拠点に、世界で巨匠としての評価を得ている韓国のピアニスト

であるとして、ブラームスの新譜が紹介されているのを見つけました。私はとっさに、ソウルのCDショップのあの人だと思いました。

ソウルでは、誰が人気なのかなと思って見ていた時に、ずらーっとCDが並んでいる一角があったのです。見てみると、ちょっとチョン・ミョンフンに顔の傾向が似ているピアニストのものでした。ベートーヴェンのピアノソナタ集が視聴できるようになっており、聴いてみると、きちんと本場で語法を身につけた人の演奏という印象です。

こんなに本格派で、活躍している風(レーベルもデッカだった)なのに、どうして私はこの人のことを知らないのだろう?

と疑問に思ったものでした。

日本で話題になるクラシック音楽のアーティストに偏りがあったとしても、言ってしまえば、どうでもいいレベルの話ですが、政治・経済をはじめとしてあらゆる分野で、日本では関心をもたれていないものの中にも重要なものがあるに違いないと思うと、非常に怖いです。

録音はフランスものが多いみたいですが、私がソウルで視聴したのはこれです。国内盤が出ているCDも何枚もあるようなので、実は日本でもメジャーなのかも。
Beethoven: Piano Sonatas 16 - 26 Beethoven: Piano Sonatas 16 - 26
(2005/08/15)
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今日は、さらなる飛躍を目指し、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の音楽は、こうしたらもっと良くなるという点について考えてみたいと思います。

1. 弦楽セクションの響き
金管はさすがうまいし、木管もヴィルトゥオーゾ的なものは感じないがオッケー。リズムが身上のティルソン・トーマス(MTT)の音楽で重責を担う、音のエッジをつくる打楽器やピッコロもがんばっています。改善の余地があるとしたら、やはり

弦楽セクションの響き

だと思います。今でも十分美しいし健闘していると思いますが、ベルリンフィルを生で聴いたときの弦の分厚い響きなどと比較すると、響きが薄いと感じるのは否めません。

もっとも、彼らも認識はあるようで、昨秋ゲットした10百万ドル(約12億円)の寄付は、弦楽セクションの拡充に当てると発表しています。時間はかかるのかもしれませんが、期待して待ちましょう。

2. 汚い音があってもいい
明るくオープンなサウンドは、サンフランシスコ交響楽団のアイデンティティだと思いますが、音にもう少し陰影があってもいいかなと思います。

ティルソン・トーマスの音楽は、曲の構造が複雑なものは、それを明晰に表現してしまう手腕の方に、リズムに特徴のある曲はそのリズム感に耳が奪われるので気になりませんが、そうでない曲だと、きれいにまとまっているという印象が強くなります。選曲でクリアできるのかもしれませんが、あれだけ極上の美しさを表現できるのだから、表現の深みという点で、反対方向への振幅ももっとあっても良いのではないかと思います。

もっとも、直近のマーラー5番の録音などでは、そのあたりを苦心した形跡があり、叫びが浮かび上がってきたり、心の奥底をのぞいているような音も感じました。ほんの紙一重の差なのかもしれません。


以上、2点を指摘してみましたが、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の音楽は、他のどのオーケストラともアプローチが違う、オンリーワンのものだと思います。今後どこまで極めてくれるのか、本当に楽しみです。
ティルソン・トーマス(MTT)の活動の中で、大きなウェイトを占めるのは、教育活動です。

彼は支援者を得て、1987年にフロリダのマイアミにNew World Symphonyを創設、芸術監督として指導にあたっています。

これは、全米の音楽院を卒業した優秀な若者を3年間アカデミーとオーケストラで教育し、プロの演奏家としての音楽性、職業観、メンタリティを身につけさせようというもの。

その目的は、生きた音楽を人々に届けられる演奏家を育てるというもので、サンフランシスコ交響楽団のミッションと似ています。

毎年1,000人以上の応募者から30人程度という超狭き門なのですが、既に630人もの人材を世界中のオーケストラに輩出しているとのこと。

内容を見ると、生活費やバス・キッチン付個室の提供(!)から始まり、ソロコンサート・室内楽・オーケストラなどの多くの演奏機会の提供、メジャーオーケストラの楽団員等のコーチ陣、舞台でのメンタル面のコーチまでいます。専用の劇場や練習場も所有。

アルバイトしなくても音楽に専念できる環境で、しかも教えてくれるのがティルソン・トーマス。オーケストラコンサートの共演者もルネ・フレミング、トーマス・ハンプソン、ヨー・ヨー・マなどのメンバーがずらり。一生分のラッキーを使い果たしちゃうのではというくらい恵まれています。

これらの活動は、フロリダ州をはじめ、多くの企業や個人の支援で成り立っているということもあり、コミュニティへのアウトリーチ活動に非常に力を入れているようです。学校訪問から、子ども向けコンサート、地元の音楽をやっている高校生のメンターになって人を育てる経験を積ませるなど、盛りだくさん。

さらにインターネット回線でアメリカの他の音楽院と結び、より多くの若者が教育を受けられる試みなどもやっています。

そしてここもやはりプロフェッショナルなマネジメントスタッフやボランティアに支えられています。

このように多くのエネルギーとお金を必要とする活動を実現させてしまっているティルソン・トーマス。彼の活動からは、人を動かすとか育てるということについて考えさせられます。

New World Symphony ウェブサイト
ティルソン・トーマス(MTT)が振る日は、毎回がスタンディングオベーション状態のサンフランシスコ交響楽団のコンサート。他の指揮者の日はどうなのか、非常に興味があります。

2006-2007シーズンは、どんな指揮者が登場するのか見てみると、

前音楽監督のブロムシュッテット、副指揮者の若い人以外だと、ざっと
ビシュコフ、アシュケナージ、ジンマン、マズア、メッツマッハー、ヴァンスカ、デュトワなどの名前が並んでいます。

さすがに爆演系はいないと言いたいところですが、ビシュコフは爆演系?

目がいったのは、メッツマッハー。こんなところでお目にかかるとは!彼の腹に一物あるような雰囲気のファンなもので。

サンフランシスコ交響楽団では定期会員(32,000人)の占める割合が高く、会員はカテゴリーから選ぶシステムになっているため、いろいろな指揮者やソリストが組み合わせられたものを買うことになります。

昨秋、N響がアメリカツアーでサンフランシスコ公演を行ったときも、サンフランシスコ交響楽団のこうしたシリーズものに組み込まれていました。

お客さんもいろいろ聴けた方が楽しいし、オーケストラもさすがに一年中ティルソン・トーマスの音楽づくりにつき合うのはしんどいでしょうから、一石二鳥と言えましょう。
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のコンサートは、自分の感性に刺激を受ける感じがするというお話をしました。具体的にはどういうことなのでしょう?

<演奏>
● 生命感、躍動感にあふれた演奏
● 感動させようとするよりはむしろ立体化した音楽を提示し、「さあ、これをどう聴くかはあなたの自由です」と言われている感じ

<プログラミング>
● いろいろな方向から刺激がくるような、緩急ある組み合わせ
● アメリカ現代ものを積極的に取り入れている

<プレゼンテーション>
● 聴く人に届ける意識の演奏
● 毎回プレトークを実施、聴くときに参考になるアイディアを提示

このプレトークでは、曲の説明をするのではなく、アイディアを提示するというところがポイントです。

例えば現代ものでも、この曲は音楽史上どういう系譜の延長にあるかということを、過去の作品を聴かせて、それとの相関で曲をとらえさせる。作曲家が採用したモチーフとかその展開を分解して見せ、どういう工夫をしているのか理解させる。その音楽を特徴づけているものは何かを探るといった内容なのです。

このプレトークのベースの上にティルソン・トーマスの手腕による演奏が乗っかることで、曲が難解でよくわからないものから、作曲家の発想や構造からインスピレーションを得るものに変わるのです。

プレトーク(出演者以外が担当)で、すでに客席の7~8割が埋まっている状態ですから、彼らの努力、推して知るべしです。
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のコンサートは、客席の空気が違うと書きました。

どう違うかというと、お客さんの演奏への惹き込まれ度合いが、普通のコンサートが5だとすると、8くらいあるということ。理由は、

観客との信頼関係がある

からだと思います。KEEPING SCORE では、ティルソン・トーマス(MTT)が音楽監督になってから最初の4~5年間に、これを作り上げるために意識的に努力をした様子が伺えます。

この信頼関係ということを考える際にポイントとなるのは、彼らのビジネスモデルです。彼らは1回毎のイベントとしてコンサートを提供するのではなく、継続的にデイビスホールにオーケストラを聴きに行くということを生活の一部にしてもらうことを目標にビジネスを組み立てています。

だから定期会員(subscriber)が占める割合が高いし、継続的な関係だから信頼関係が重要になります。

そして、信頼関係とは何かというと、サンフランシスコ交響楽団のコンサートに行けば、何かインスピレーションが得られる、自分の感性が刺激されるものが得られて面白いという思いをもってお客さんが演奏を聴いてくれているということだと私は思っています。

ここがティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のコンサートのユニークなところです。一般的な「感動」とか「興奮」といった直接情に訴えかけるものよりもむしろ、演奏はもちろん、プログラミングやプレゼンテーションの仕方も含めたトータルで、コンサートから何か自分の感性が触発されて、ひらめきがあるような感じが得られるのです。

昨今(特に国内のコンサートで)、顧客満足度を上げるためなのかもしれませんが、感動を呼ぶ「熱い演奏」が多いような気がしていた私は、こういうアプローチのコンサートもあったということに、目から鱗でした。

新鮮です。ぜひ皆さんもデイビスホールでお試しを。
私の音楽生活のインフラに、衛星デジタルラジオ放送の「ミュージックバード」があります。いろいろなジャンルの中で、うちは「THE CLASSIC」というクラシック音楽専門のチャンネルを契約していて、もう10年近くになります。

私は朝起きるとまず、ラジオのスイッチを入れます。朝のテレビ情報番組を見なくても平気に暮らせるものです。

これの何が便利かというと、どの音楽をかけるか悩まなくてよいという点。

自分でCDを選ぶと、同じジャンル、同じ作曲家、同じアーティスト、ひいては同じ曲を選びがちです。

でも、この放送なら、普段自分ではなかなか選ばないジャンルや曲がいろいろと聴けるので、新たな発見があって楽しいのです。

難点は、いつも音楽をかけていると、逆に聞き流してしまうことでしょうか。

放送ではいろいろな番組があります。新譜がいろいろ聴けるものとか、ヨーロッパの音楽祭やコンサートのライブをいち早く聴ける番組もあります。

今までで一番印象に残っているのは、グラーツでやったアーノンクールのヴェルディ「レクイエム」のライブ。その後に出たウィーンフィルとのCDがごく普通の演奏に聴こえたくらいでした。

「メトロポリタンオペラライヴ」の番組も楽しいです。これはアメリカのラジオ放送を流しているのですが、劇場が盛り上がっている様子がよく伝わってきます。幕間の休憩時間が長いので、その間にトークやオペラに関するクイズをやっていたりとか、スポンサーのアピールの仕方とか、そういう伝え方の工夫みたいなものが聴いていて面白いです。

最近はインターネットラジオでもいろいろやっていますが、手軽に高音質という点で、おススメです。

「THE CLASSIC」のウェブサイト
http://musicbird.jp/channels/musicbird/theclassic/index.html
ティルソン・トーマス(MTT)の音楽を語る上で、テンポというのは、欠かせません。

彼には、もうこれ以外にはありえないというくらいまで突き詰めたテンポ設定の詳細なデザインがあって、それを土台に音楽を積み上げている感じがするのです。

そしてこのテンポが、非常に説得性をもってベースにあることと、彼持ち前の高精度で、躍動感あふれるリズムが合わさって音楽の流れを作り出し、音楽を独自のものにしている気がします。

KEEPING SCOREの中では、彼が舞台袖でテンポを確認している姿が映っています。

私は最初これを見たとき、精神統一のおまじないみたいなものなのかなと思いましたが、その後に舞台上でも、次の楽章を始める前にいちいちテンポを確認してから振り始める姿を見、恐れ入ってしまいました。

また、彼がピアノで弾いた部分に後からオーケストラの演奏をかぶせても、ぴったり一致しているのにも驚きました。

ティルソン・トーマスのテンポは、その日の気分や勢いで変わったりしなさそう。だから東フィルがオーチャードホールでやっているジルベスターコンサートを彼が振れば、時計を見なくても12時ジャストに曲を終わらせられますよ、きっと。
KEEPING SCOREは、ドキュメンタリーを観て、ライブ演奏を聴いて、ウェブサイトを見て「面白かった」で終わるプロジェクトではありません。

その先に、教育とコミュニティプログラムが広がっているのです。

教育プログラムとはどのようなものか、ウェブサイトを見てみると、私たちが一般にイメージするものとは発想が違っていて、新鮮な驚きです。

音楽そのものを教えるのではなくて、主要教科を学ぶ際に、音楽をコミュニケーションや感情表現の能力を高めるための手段として取り入れようというものなのです。

そして彼らは、まず学校の先生を対象に、これら音楽を教育手段に取り入れる方法を学ぶ研修を行っています。例えば、

<国語>
● 音楽を聴いて、それをどう聴いたかについてプレゼンテーションすることで、批評する力とコミュニケーション能力を養う。
● いろいろな音楽を聴いて、それを3つのジャンルに分けてみるという作業を通して分析力を養う。
● ベートーヴェンの運命の音楽、その時代の歴史、ベートーヴェンの年譜の3つを素材に物語を書いてみる。
<歴史と社会>
● アメリカの歴史を学ぶときに、その固有の音楽を打楽器を用いて体験する。
● 奴隷制度を学ぶ際に、奴隷の境遇を想像するためのツールとして、奴隷たちに起源がある音楽を用いる。
<算数と理科>
● 分数を学ぶときに、リズムの記譜法とその演奏の仕方のしくみを取り入れる。
● 太陽系のしくみとか各惑星の特徴を考えるときに、何に着目するかという視点を養うための素材として、ホルストの惑星における惑星毎の音楽の違いを用いる。
<芸術>
● 音楽と美術における「線」の概念とはどういうものか考える。
● コープランドの「common man」を聴いて、楽器の構成や和声の変化によって、自分の感情がどう変化したかを観察する。

というような内容なのです。面白そう。

アメリカでは、美術も同じように主要教科の理解に役立てるために用いられている模様。サンフランシスコ交響楽団には、教育プログラムの専門スタッフが4人もいる上に、他の機関との連携も進んでいるようです。

コミュティプログラムの方の詳細は、今後発表される予定です。

KEEPING SCORE ウェブサイト
ティルソン・トーマス(MTT)の経歴で、日本と関係があるものをあげると、

1971 日フィルに客演(27歳)
1989、1990、1991、1992、1995 ロンドン響と来日
1990~2000 PMF芸術監督
1995 PMFオーケストラと広島で自作曲「しょうわ/ショアー」を初演
1997 サンフランシスコ交響楽団と来日(東京・名古屋・秋田)
(サンフランシスコ交響楽団の音楽監督には1995シーズンから)

私はPMFで彼が毎年来日していたときも、コンサートに行ったことはありませんでした。今となっては悔やまれますが、サンフランシスコ交響楽団との今の音楽は時間をかけて作り上げたものだし、今だからこそできるという印象を強く受けるので、来日当時に聴いていたとしてもあまり反応しなかったかもしれません。

さて、マーラーシリーズ(2001~)が世界で高い評価を受けて以降、全く来日がないティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団。

彼らは周到なマーケティング戦略を練って活動しているわけですが、日本に来て稼がなくても資金調達手段がある彼ら。ヨーロッパは世界的な評価という点ではずせないでしょうが、彼らのアジアへの目は中国を向いているようです。

日本(東京)はクラシック音楽の消費マーケットとしては巨大だけれども、競合他者多く飽和状態。しかも顧客はヨーロッパ&ブランド志向。ということでターゲットからはずれたのでしょうか?

賢明な判断かもしれません。
ティルソン・トーマス(MTT)の経歴には、ピアニストでもあるとあります。手も大きい(顔が小さい?)。

弾き振りをはじめ録音も多数あるし、サンフランシスコ交響楽団のコンサートでもティルソン・トーマスがピアノを弾く企画は人気があるようです。KEEPING SCOREの中でも、ピアノをよく弾いていて、ペンと同じレベルの道具といった感じです。

芯にヒットする打鍵というか、「春の祭典」でも、オーケストラかと思うくらいに曲のエッセンスを表現しています。もっとも彼は、「春の祭典」の2台のピアノ版の録音を出しているくらいなので当然かもしれませんが。

彼のピアノを聴いて思うのは、専業ピアニストの人たちとアプローチが違うということ。

専業ピアニストは、ミクロ的表現に自分の個性を出そうとするのに対して、ティルソン・トーマスは、曲の全体像から入って、その音楽の本質的な部分にフォーカスして弾いている感じがします。

だから彼のピアノを聴くのは面白いし、人気なのもよくわかります。

ちなみに彼の家のピアノは、ヤマハ製です。

若き日の録音。ストラヴィンスキー自身の手による編曲2台のピアノ版
Cage: 3 Dances; Reich: 4 Organs; Stravinsky: Rite of Spring Cage: 3 Dances; Reich: 4 Organs; Stravinsky: Rite of Spring
John Cage、 他 (2002/02/12)
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サンフランシスコ交響楽団が成功した裏には、社会の流れにうまく乗っていたということがあると思います。

1.地元の支持を集めたという点について
インターネット社会になって、個人や企業がどこにいても大きな成功を収めることができるようになったため、サンフランシスコという西海岸のベイエリアに位置すること自体が、大きなアドバンテージになり、多くの支援者を集めることができた。

2.国際的な評価を上げたという点について
これは何といっても、マーラーのCDの圧倒的ハイクオリティ(演奏も、録音も)によるところが大きいと思いますが、まずSACDを始めとする技術が、彼らの精緻な演奏スタイルに合致し、そのおかげで世界中の人々にティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のコンビを知らしめられたということ。

そしてやはりインターネットによって、自主レーベルであっても世界中にCDを販売することができたという点。

3.社会の価値観の変化
物質的に飽和状態に至った中で、人々が感性とかエモーショナルなものに価値を感じる方向に社会が変化してきているということも、彼らの活動が支持を集めたことにつながっているのかもしれません。

彼らからアウトプットされるいろいろなものを見ると、これらは偶然重なったのではないのだろうと思います。なぜなら、活動のターゲットやプレゼンテーションの仕方、販売方法など、どれをとってもきちんとマネジメントが及んでいることを感じさせるからです。社会の変化に合わせてこれらを積み重ねていった結果が成果となったのでしょう。
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の音楽は、コントロールが効いている感じがします。CDの評などでも、ティルソン・トーマス(MTT)には、オーケストラを完璧にコントロールするテクニックがあるというように書かれているのを見たりします。この「コントロール」とは何かと考えると、

音楽が一つに統一されていて、オーケストラを自在に操っているように聴こえる

ということだと思います。どんなテクニックなのでしょう?

私はこれを探るべく、ビデオの映像を観察しました。

でもティルソン・トーマスの棒は、シンプル・正確・基本に忠実にしか見えない。流麗さという点では、ひざのクッションと振り下ろした時の腕の脱力が関係あるのかなと思いましたが、他に特別なことはなさそう。

そして、結論。「コントロール」の正体は、コミュニケーションの量が非常に多いということに尽きると。

舞台上で身体や目を使って出している情報ももちろん多いですが、ライブラリアンの活躍から始まり、メンバーとの打ち合わせ、どういう音楽にしたいか言葉でも語ること、相手の反応にリアクションすること、指揮者だけではなく、メンバー同士もお互いをよく見て演奏することなど、彼らの中を流れるコミュニケーションの量が多いということ。

また雰囲気も、ティルソン・トーマスは言っていることの中味は無理難題っぽいのに、相手に提案する口調で押し付けないし、「大変かもしれないけれど、やってみて」という感じなのです。

そして彼やメンバーの話から総合すると、これらを積み重ねながら、自分たちのサウンドを時間をかけて作り上げてきたということのようです。

誰にでもできそうで、できなさそう。特別な指揮法があるよりも、もしかしたら実行するのは難しいかもしれません。
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団が、社会に対してオーケストラやクラシック音楽が果たす役割について、メッセージを発しながら活動しているというお話をしました。

これは裏を返せば、アメリカ社会では、常に自分たちの存在価値をアピールしていかなければ生き残れないということなのでしょう。

これに比べて、ヨーロッパのオーケストラがここまでこのようなアピールをしていることろは、あまり目にしません。

ヨーロッパは、国などの公的支援の比率がアメリカよりも高いし、芸術家が芸術家であるだけで、一定の尊敬をもって扱ってもらえる社会だということなのでしょう。

日本人アーティストにしても、大植英次さんとか五嶋みどりさんとか、アメリカでの活躍の度合いが高い人の方が、社会に対してもメッセージを発しているように思います。

大植さんが音楽監督の大阪フィルハーモニー交響楽団
せっかくいろいろ活動しているようなのに、ホームページに掲載がないのは残念。

五嶋さんのミュージック・シェアリング
さすがいろいろな活動をされています。五嶋さんは、今シーズンは昨年10月にサンフランシスコ交響楽団にソリストとして登場なさいました。

日本はクラシック音楽に関しては、圧倒的にヨーロッパ志向のように思いますが、アメリカから学べることもたくさんあるように感じます。

私自身も、ずっとアメリカのオーケストラは、音が大きくて金管が派手に鳴っているイメージでしたが、今となっては何を根拠にそう思ったのか不明。ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の音楽は、決して力で押さないし、どこまでもしなやかです。
薫るエレガンス。でも美しいだけではありません。
Mahler: Symphony No. 4 [Hybrid SACD] Mahler: Symphony No. 4 [Hybrid SACD]
Stephen Paulson、 他 (2004/11/09)
San Francisco Symphon
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ティルソン・トーマス(MTT)は、緩徐楽章において、遅いテンポでフレージングを大きくとるということをよくやっていますが、この3楽章でも極限までそれをやっています。

サンフランシスコで実際に4番を聴いたときも同様で、「本当にやっている!」と驚きました。ただフレージングが長すぎて、途中で客席の物音が入ったりすると、一息に聴ききれない。だからこれは、静かな部屋で録音を聴くのがおすすめです。

歌手については、CDの方は若々しい声です。サンフランシスコで聴いたのは、もっと豊かな声の人でしたが、どっちもありだと思います(私自身は、前にクリスティーネ・シェーファーが歌っているのを聴いて、あまりのうまさに衝撃を受けてからというもの、その印象が強いのですが)。

楽章ごとの構成も見事で、全曲を聴き終えると、何だかとても満ち足りた気分になれます。
今年は1/4にハイビジョンが映るお宅で見せていただいたのですが、バレエとお花の映像にうっとり。

一番印象に残ったのは、やはりメータのスピーチです。毎年、「Prosit Neujahr!」の前に指揮者が一言話しますが、今年はブルガリアとルーマニアのEU加盟を歓迎するという内容でした。

確か、ユーロの通貨が流通を開始する年も、その旗がステージに大きく掲げられていたように記憶していますが、やはり全世界にテレビ中継されるあのコンサートは絶好のEUアピールの場なのでしょう。

ヨーロッパに出かけると感じるのは、日本にいて報道される割合やもろもろから抱く日本人の一般的な感覚よりも、実際のEUのプレゼンスは大きいということ。

ユーロ高にしても、日本の輸出企業の業績押し上げになるし、日欧の金利差から仕方がないのかとも思いますが、長期的に見てこのままなされるがままでいいのかなと思ったりします。

さて、音楽の話に戻り、来年の指揮者はプレートルとのこと。
大変に喜ばしいことです。ものすごくエネルギッシュですから、全世界の高齢者に夢と希望を与えること間違いなし!思い切ってやっていただきたいものです。

ところでウィーンといえば、昨年行ったとき、国立歌劇場の建物正面にスポンサー企業のロゴがぶら下がっていたり、子どものためのオペラプロジェクトの看板が掲げられ、さらにそのスポンサーが携帯電話の会社だったのを見、驚くとともに時代の流れを感じました。なにせ保守的イメージのウィーンで、国を象徴する観光スポットに看板ですから。

そのうち楽友協会にも、看板が掲げられる日が来るのでしょうか。
1/6のNHKBSのクラシックロイヤルシートは、サロネン&ロスフィルでした。

このロスフィルとサンフランシスコ交響楽団は同じカリフォルニアで、お互いに競い合って盛り上げている関係です。

曲はハイドンの交響曲「くま」と「展覧会の絵」

演奏の印象は、昨年出た「春の祭典」のCDを聴いたときと同じで、とても若々しく活力あふれるもの。

曲が終わった直後に、客席から「キャーッ」というような歓声が上がったのに驚きました。これはサンフランシスコにはない。

ロスフィルとサンフランシスコ交響楽団を比較すると、どちらも明るいサウンドながら、ロスフィルは若くて輝かしい感じ、サンフランシスコはハイセンスでコントロールが効いている音楽と個性がはっきりしていていい。

ウォルトディズニーコンサートホールでぜひ聴いてみたいです。

CDはこちら↓
ストラヴィンスキー:春の祭典 / サロネン(エサ=ペッカ)
サンフランシスコ交響楽団の資金調達部隊が専門家集団だというお話をしました。

でも、いくら彼らがプロフェッショナルでも、それだけで社会の共感を得、資金調達することはできません。

そう、ビジョンを語るリーダーの存在です。

いろいろなリリースを見ると、ティルソン・トーマス(MTT)は、オーケストラやクラシック音楽が社会にとってどういう役割を果たすのかについて、社会に対して自分の言葉で明確に語っています。

アメリカ社会のリーダーは皆そうなのかもしれませんが、社会に対してシンプルで明確なメッセージを発し続けることは、非常に重要だと思います。

もちろん、彼らの作りあげる音楽が生命感にあふれていて、聴く人に社会にとって必要だと思わせるという点が前提にあるわけですが。

今となっては、支援者がいるからいろいろなことができる。そうするとその音楽を聴いて新たな支援者が現れるという完全にプラスのサイクルになっているようです。

サンフランシスコ交響楽団がマーラーシリーズの自主レーベルでのリリースをはじめ、KEEPING SCOREや野外での無料コンサートなどのコミュニティ活動をどうして行えるかといえば、それは資金調達できるからです。

コンサートのプログラムには、77ページの内、40ページも広告が掲載されているし、支援者名の記載が11ページも続き圧巻です。10万ドル(約12百万円)以上の寄付者も多く、KEEPINNG SCOREは一件で10百万ドル(約12億円)拠出した方を筆頭とする寄付によって実現の運びに至っています。

彼らの資金調達ルートは、国・州・市からの公的なものと、企業・個人の民間からのものと大きく二つに分かれますが、中心は民間からの支援です。

私はアメリカの税制などはわからないのですが、ウェブサイトやパンフレットを見る限り、次のようなことをやっているようです(シンフォニーの組織を見ると、Developmentの部門には24人もの専門スタッフがいます)。

個人・資産家向け
● 節税効果のある仕組みものを外部の専門家と組んで提案
● 資産設計の段階でポートフォリオにシンフォニーを入れてもらう

個人・一般向け
● あらゆる機会に寄付できるようにする(シンフォニーのウェブサイトでチケットを買っても、最後に寄付できるようになっている)
● ボランティア組織の中に地区毎のとりまとめのような役割を果たす人たちがいる

企業向け(支援企業で支援組織が作られている)
● 支援することで企業側が得られるメリットを、具体的な数字などで表す
● いくつかのパッケージを用意し、その中から企業が金額とメリットのバランスを見て選べるようになっている
● ダイニングやレセプションなど接待で使えるサロンルームがシンフォニーの中にある

この他にもアメリカには、フィランソロピーの財団が多くあること、民間からの寄付に公的な支援がプラスされる制度の存在などいろいろあるようですが、とにかく資金調達に大変なエネルギーをかけていることは確かです。
新年を台湾で迎えた我が家。
1月1日は、台北で国家交響楽団(NSO)と台湾の歌手による「メリーウィドゥ」のニューイヤーコンサートへ。

中正記念堂にある国家音楽庁(コンサートホール)


場所は、中正紀念堂にある国家音楽庁(写真)。派手な外観ですが、中は意外に地味目なコンサートホールでした。

ステージの半分にオーケストラがのって、残りの半分がオペレッタの舞台という設定。狂言回し役の役者さんが登場し、歌手の演技は少なめですが、全曲やっていました(歌詞は原語、セリフは中国語)。

ハンナは金持ち中華マダムといった風情で貫禄充分、ダニロも熱いキャラで、皆歌も演技も達者。オーケストラも若々しい感じで、おなじみメンバーなのでしょう。お客さんの反応のストレートで熱いこと!

オペレッタを観に行って手拍子するのがそれはもう大好きな私としては、台湾でもそれができて感激。

最後に客席天井のくす玉が割れて、たくさんの風船が降ってきて大満足。

幸せなニューイヤーの幕開けでした。謝謝。
プロフィール
 

潮 博恵

Author:潮 博恵
MTT&SFSの音楽センスと革新的な活動に感銘を受け、ブログを開設。

【続・徹底研究】ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団で、よりわかりやすく彼らの活動と最新情報をご覧いただけます
続・徹底研究MTT&SFS


著作権分野の英文契約書作成等の行政書士をやっています。
うしお行政書士事務所

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