私はマイケル・ティルソン・トーマスという人は、存在自体がふるっていると思っていますが、今日(6/16)プロコフィエフ・フェスティバルの2プログラム目に出かけ、考えることもとことんふるっているということに、してやられました。

14日の初日に行ったときは、いつもの彼らの音楽という感じで、普通だと思いました。ところが、2プログラム目を聴き、あれは「これからフェスティバルをやります」という華やかなプログラムによる“つかみ”であって、ここからが本題だったのです。

プログラムは、1曲目がアメリカ序曲、2曲目が交響曲第3番、後半がフェルツマンのピアノでコンチェルトの2番。

この構成にはもうやられたとしか申し上げられないです。アメリカ序曲は初めて聴いたのですが、弦がチェロ1人とコンバス2人、管も数人で後はピアノが2台とチェレスタに打楽器が入るだけという編成。とても個性的な響きだけれど、金管の豊かな響きが活きていました。

対照的に交響曲はフル編成で、あ然とするくらい完成度が高かったです。メインのピアノコンチェルトは、フェルツマンのピアニズムをたっぷり堪能できました。私はこのピアニストを知らなかったのですが、ロシアンな詩情の表現が素晴らしかったです。コンチェルトはとにかくピアノ前面だったのですが、ピアノに対するオケの入りがいちいち決まっていました。

プロコフィエフのフェスティバルは、11日間で4プログラム7公演もあり、そんなにたくさんをティルソン・トーマスが一人で振ってやるのだから、密度は薄めなのかと思いきや、とんでもない。今回も徹底的ハイクオリティです。

そしてそんなに公演やってお客は入るのか?と思っていたら、ちゃんと入っていました。この日は土曜日ということもあり、開演1時間前のプレコンサート・リサイタル(フェルツマンのピアノ)もオーケストラフロアのほとんどが埋まっていました。サンフランシスコ交響楽団のプログラム冊子は、結構いろいろ書いたものが詰まっているのですが、休憩時間にそれを読んでいる人を結構見かけますし、帰りに駅で電車を待っているときも、ホームでそれを読んでいる人が何人もいてびっくり。

残りのフェスティバルも趣向を凝らしたプログラムで非常に聴きたいのですが、聴くためには後1週間滞在しなければならないので、さすがに日本に帰ります。
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団は、毎年テーマを決めた約2週間のフェスティバルをやっていますが、今年はピアノコンチェルトの全曲をメインに据えてプロコフィエフを取り上げます。そのフェスティバルの初日(6/14)に行きました。

プロコフィエフ・フェスティバル

駅からホールまでの通りにはフラッグが続きます。

まず、会場入り口で民族衣装を着たアコーディオンとギター(?)の伴奏で歌手がロシア民謡を歌って出迎え、いきなり気分はロシアンに。こういうところがサンフランシスコシンフォニーなのです。

次はコンサートの1時間前にプレコンサート・リサイタルです。こちらはコンサートマスターのバランチックが、今回のフェスティバルで登場する4人のピアニストの1人であるフェルツマンとヴァイオリンソナタの1番を披露しました。

この日は、コンサート後にフェスティバルを支援するパーティがあったので、タキシードやドレスを着たお客さんがたくさんいました。

コンサート1曲目は「三つのオレンジへの恋」組曲。MTT&SFSのプロコフィエフは、彼らの生き生きとした音楽のよさが前面に出ていて楽しいです。いつも思いますが、オーケストラの弦楽セクションは当然ボーイングが揃っているものですが、SFSの場合、出てくる音のまとまり方が常識を超えているため、ボーイングによる視覚的な一致と音の一致による迫力は圧倒的です。

2曲目はブロンフマンのピアノでピアノコンチェルトの3番。ブロンフマンを生で聴くのは2回目でしたが、弾丸のようでした。この曲は1楽章だけでもえらい盛り上がるので、終わったときに拍手が起きました。すごい拍手だったので、ブロンフマンはすかさず立って拍手に応えたのですが、MTTはそれに対して「座りなさいって!」というような仕草で応酬し、オーケストラと会場は爆笑。

MTTはおちゃめなことを毎回何がしかやっています。マーラー7番のときは、5楽章に入る前に気合を入れる感じで、靴底がすべらないように指揮台の上で靴底を何度もなすりつけていたし、プラハ公演では後半のプログラムで舞台に登場したときに、ジャケットのボタンを全部はずして登場し、目が点になっているオーケストラメンバーに飛ばしていくよという感じで応えていました。

後半は、彼らの定評ある「ロメオとジュリエット」からで盛り上がって終わり。

この日は、日本から所用でサンフランシスコに来た知人が、私が語るサンフランシスコ交響楽団とは如何なるものかということで聴きに来てくれました。彼女もサンフランシスコ交響楽団のコンサートの楽しさを喜んでくれて良かったです。何でも、MTTの指揮姿が楽しめるという話は聞いていなかったそうで、繰り出されるアクションのうち、キュートなアクションの数々にウケていました。
今回サンフランシスコに来て、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団に日本からの願いを伝えましたので、ご報告します。

来日について
これについては、マーラーのCDを聴いて、本当にこんな演奏をやっているのかと疑問をお持ちの日本全国の皆様を私が勝手に代表し、MTTに直接伝えました。

メッセージを伝えるにあたり、プラハ公演からの帰りの飛行機に乗り合わせたとき、彼が「PRAHA」といっぱい書いてある野球帽をかぶっていたので、プラハに対抗して「日本」と漢字で書いてある真っ赤な野球帽をお持ちしました。

MTTはサービス精神が旺盛なので、目の前でかぶってくれました。これを調達するために、わざわざ浅草寺の仲見世まで出かけ、修学旅行生にまみれながら探した甲斐があったというものです。

余談ですが、こちらに来て、どんなファッションにも野球帽をコーディネートしてしまうのが普通だと知りました。特にロサンゼルスで野球帽をかぶっている人をよく見かけました。MTTはあたりまえのファッションだったのです。

マーラーのKEEPING SCORE
こちらは、KEEPING SCOREプロジェクトのディレクターの方にお目にかかったときに、うちの夫がマーラー編を待っている旨伝えました。私はうっかりしていたのですが、さすがマーラーの録音を片っ端から聴いて人生を送ってきた人は、肝心なことを忘れません。

マーラーに関しては、作品の内側に迫る内容のものを何らかの形で映像化することを現在ティルソン・トーマスが構想中とのこと。ただマーラーは難しいそうです(要素が多くて単純化しづらい、量が多すぎるなど、1時間に収めようとするとただの作品紹介になってしまうということなのかなと思います)。

やるとしても、2009年にやる次の3作品の後になるそうですが、楽しみです。

今回サンフランシスコで音楽と同じくらい楽しみにしていたのは、おいしいものがたくさんあると評判のサンフランシスコの食を体験すること。そしてカリフォルニアといえばカリフォルニアキュイジーヌ、創作料理の世界です。

この創作料理、私はかねてより「創作料理ハズレ説」を唱えていました。どういうことかというと、食材の組み合わせや味付けで定番といわれるものには、永い年月を経て残ってきただけの合理的理由があって、あえてそれをはずして料理を創ることには高度な能力が要求される。創作料理を手がける料理人は、ほとんどがこのことに気づいていないか甘く見ているかのどっちかなため、創作料理をうたっている店はハズレだと思ってまず間違いないというもの。

このことは音楽でも同様です。例えばティルソン・トーマスはレパートリーでも表現でもアメリカンなことをたくさんやっていますが、どうして彼のアメリカンさを面白いと思えるかといえば、それは徹底したスコアリーディングに基づく練り上げや彼にしか出せないリズム感というベース部分での傑出したものがあるからです。もしここが十人並みだったら、アメリカンも何もないと私は思っています。

話を料理に戻して、そのハズレ説提唱者の私ですが、サンフランシスコではこのことが気になりません。なぜか?海外だから気が大きくなっているのか?それもあると思います。

しかしそれ以上に、日本で出てくる創作料理は、もとの料理が何か想像できて、そこから出発しているものが多いのに対し、サンフランシスコで出てくるものは、もとが何かわからないものが多く、創作部分の比重が高いからのような気がします。

マイケル・ミーナという有名シェフの店で、デザートのフラペチーノに東南アジアで売っている黒松コーラが入っていました。夫はこのコーラが大好きなそうで、こんなところで出会うとは思わなかったと大ウケでした。このデザートはお店の定番だそうで、確かに何度もそれがサーヴされているのを見ました。

サンフランシスコのレストランのレベルは高くて、こちらに来てから食べたものは、どれもおいしかったです。
ティルソン・トーマスに関する書籍はほとんどありませんが、ロンドン響時代に評論家との対談集が一冊出ています。私はずっとこの本を探していたのですが、サンフランシスコの図書館にありました。

幼少時代の話と影響を受けた音楽家の話が中心になっています。この本や彼がKEEPING SCOREの中で語っていることを総合すると、彼の音楽のルーツは、

祖父母とその仲間たちから受けたロシアもの
ユダヤの音楽
家に集まっていたアーティスト(ガーシュウインなど)からもたらされたもの
子ども時代〜南カリフォルニア大学で受けた音楽教育
ロサンゼルスにいた偉大なアーティスト(ストラヴィンスキー、ハイフェッツ、ルービンシュタインなど)
大きな影響を受けたアメリカの作曲家(アイヴス、コープランドなど)
同時代の作曲家(ライヒなど多数)
パフォーマンスのセンスを学んだジェームズ・ブラウン
忘れてはならないバーンスタイン

以上の9つにあると言えると思います。そしてティルソン・トーマスの音楽は、基本的にハッピーで肯定的ですが、これは幼少時代の幸福感が根底にあるのかなと私は感じました。お父さんが飲んだ帰りに買ってきてくれた犬のぬいぐるみに名前をつけてかわいがっていたそうなのですが、さわってぼろくなったそのぬいぐるみをピアノの鍵盤にのっけている写真が載っていました。何かとても温かい感じがしました。

彼が何年も前にバリ島に行ったとき、当時ガムランのミュージシャンはバッハもモーツァルトも知らず、クラシック音楽の指揮者とはどういうものか知らなかったそうです。そこで、どんなものかを知ってもらうために、彼らの前にいつも舞台で着る格好で出ていき、マーラーの5番を指揮しながら一人で再現したそうです。しかもガムランのミュージシャンだから打楽器のリズムには敏感だろうと思って、打楽器の音をできるだけ入れたとか。MTTは擬音の能力が発達しているから、さぞかしふるったマラ5だったことでしょう。

ニュー・ワールド交響楽団については、音楽学校を卒業したとたんに次に何をしたらいいのかわからない。自分に何が向いていてどうすべきなのかわからない状況で勉強を続けていくことは非常にストレスがかかり、それでせっかくの才能をつぶしてしまうことがままある状況を変えたかったと話していました。だからオーケストラをはじめとしてソロ、室内楽、アウトリーチなど様々な機会を提供して、若者が進路を考えられるようにしているとのこと。

ティルソン・トーマスが音楽づくりで一番重要だと思うことは、オーケストラとも聴衆ともコミュニケーションだそうですが、彼はニュー・ワールド交響楽団の若者たちに教える中でそう考えるようになったそうです。

この本は1994年の出版で、これからサンフランシスコが始まるというところで話が終わっているのですが、次のような一節がありました。

これから技術が進めば、メジャーレーベルの都合ではなく、アーティスト自身が自らプロデュースして、本当に創りたいものを創って売り、そしてそれをいいと思ってくれた世界中の人とアーティストがつながっていけるような時代がくるかもしれない。
マーラーの交響曲第7番のコンサートのお話の続きです。

プレトーク
開演1時間前にいつものようにプレトークがありました。やはりオーケストラフロアの8割は埋まっていました。内容は、マーラーが用いた音楽素材についてが中心。民俗的なものをはじめ、シューベルトなど他の作曲家やマーラー自身の過去の作品で用いられた素材がこの作品でどう料理されたか。マイスタージンガーのところは、マーラーのCDをかけて、それにピアノでマイスタージンガーのフレーズを重ねて聴かせていました。調性が長調と短調間を行き来するところなどもピアノで弾いて見せて面白かったです。30分間きっかりに、非常によく準備されたものが詰まっていました。

グラミー賞
今回この曲の録音がグラミー賞の2部門を受賞したということで、そのことに関する掲示がされていました。マーラーのレコーディングプロジェクトが大好評継続中であること、ライブレコーディングであり、お客さんの存在が大きな励みになっていて、賞はお客さんと一緒に受賞したものだということが書かれていました。賞のトロフィと録音に使った指揮棒(コンセルトヘボウの職人さんによるもので、特別にティルソン・トーマスのためにつくったものだそうです)が飾ってありました。7番のCDがショップに大量に並べられており、コンサート後にはMTTのサイン会もやっていました。

MTTの生ピアノ
6/9のコンサートでは、マーラーの前にコンサートマスターのバランチック氏とティルソン・トーマスによるモーツァルトのヴァイオリンソナタK.304の演奏がありました。当初、サロメのラストシーンの予定だったのですが、歌手の体調不良により変更。初めて生でMTTのピアノを聴きましたが、とても常識的なピアノでした。

6/10の追加公演
今回のマーラーのコンサートは、要望により追加公演がありました。10日前くらいにインターネットで見たら、まだ席が結構売れ残っていたのでどうなるのだろうと思っていたら、客席はちゃんと埋まっていました。さすが、集客力が違います。

この日は、2006−2007シーズン最終日ということもあり(これからはスペシャルイベントになります)、MTTもオーケストラもはじけていました。MTTはマーラー(3楽章)でもノリが8ビートで、アクションも全開。ヨーロッパツアーから彼らの音楽を続けて聴いていますが、音楽が一瞬で消えてしまうことをこれほどもったいないと感じることは、かつてない体験です。
どうしてもライブを聴きたかった7番。夫もマーラーを聴きにサンフランシスコにやって来て合流し、出かけました(6/9)。

今回ライブを聴くにあたり、できるだけCDの印象にひきずられないように、しばらく聴くのをやめていましたが、もはや耳に残っていて効果なし。第一印象は、CDと随分違うというものでした。

1楽章を聴いたときは、普通かもと思いましたが、2・3・4楽章がまさに「!」。ロンドン響との録音でもサンフランシスコとの2005年の録音でも、これ以上はないというくらい突き詰めていたと思ったのに、まだこんなにいろいろやることができたなんて、信じられないとしか言えません。

1楽章と5楽章は、ストレートにぱーんとした構成で、素直な感じがしました。反対に2・3・4楽章は、モチーフや声部、和声などを最初から徹底的に洗いなおして構成したというようなつくりでした。クラヲタ歴40年の夫によると、夜の歌の世界を描ききった演奏だそうです。

ヨーロッパツアーでも思いましたが、最近のティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団は、アンサンブルを徹底的に聴かせるという点は変わらないものの、以前よりもメンバーに大胆に任せてしまう部分が増えているように思います。ティルソン・トーマスのオーケストラに対する信頼は絶大で、彼はポイントしか押さえていないのに、行間が見事に埋められて一致団結した音楽が出てきます。

音楽家の歩みというのは、技術の進歩のように必ず過去よりも現在が優れているというものではなく、その時々でその時にしかない演奏で、過去との比較で語られるものではないと思います。そもそも何をもって進歩とか前進というのかということさえもわからない。そういう点で今回の7番は、今までとは違うアプローチ満載で、非常に楽しめるものでした。LSO盤もSFS盤も飽きるほど聴いたという方にもきっとご満足いただけると思います。

デイビスホールのお客さんは、あなたも私も大絶賛な人たちばかりで可笑しいです。オーケストラコンサートで舞台から遠くない席なのにオペラグラスを使っている人が何人もいるところなんて、他に知りません(応援しているメンバーをチェックしているらしい)。曲が終わったとたんに総立ちですが、これはもうお決まりという感じです。

マーラーの交響曲第7番は、ルツェルン、ベルリン、エディンバラの各音楽祭をはじめとする、秋のヨーロッパツアーでも取り上げます。ユーロ高にもめげずに聴く価値ありです。
サンフランシスコの図書館で見つけた、サンフランシスコ交響楽団についての記事の概要をいくつかご紹介します。
*大量の記事を読んだ後に、まとめてこの記事を書いたことをご了承ください。

まず、ティルソン・トーマスが音楽監督に就任したときのサンフランシスコ交響楽団は、財政的に逼迫していて、楽団員の士気も低下、「これでは生活できない!」(サンフランシスコは全米中でも物価が高いことで知られている)ということでストライキが2ヵ月も続いたりしていたそう。今となっては隔世の感があります。

それからマーラーのCDを自主レーベルで出すときは、やはりリスクが大きいことから大きな決断だったとのこと。最初は10,000枚も売れればいいくらいに考えていて、60%はシンフォニーホールのショップとインターネットで直販し、残りの40%は国内と海外で半々と考えていたとのこと。ふたを開けたらものすごく反響があって、うれしい誤算だったということです。初めのころは、コンサートの後にMTTのサイン会をやったりしたそうなのですが、ものすごい行列になって何時間もかかったそうです。

サンフランシスコ交響楽団は経営的に革新的なことをやっていますが、誰かブレーンがいるのかと思っていたら、コンサルタントの方がインタビューに応じている記事がありました。今もそうなのかはわかりませんが、コンサルタントを使っていた時期があったようです。

ティルソン・トーマスが音楽監督になった最初の5年くらいは、ガーシュウィンや他のアメリカの現代ものなど、伝統的なクラシック音楽以外のレパートリーを多く取り上げ、それが若い観客の支持を得るのに成功したそうです。最近はベートーヴェンやブラームスなどもよく取り上げていますが、その古典的なものから前衛的なものまでをミックスしたプログラミングがやはり評価されていました。MTTもプログラムはよくよく考えて選ぶと答えていました。

今年も6月にプロコフィエフのフェスティバルがありますが、テーマを決めて2〜3週間くらいで集中的に取り組むフェスティバルは毎年やっているようです。今までに取り上げたものは、ガーシュウィン、アメリカの作品、ベートーヴェン、マーラーなど。マーラーは9つの交響曲を全部とその他の歌曲などを取り上げ、大成功だったそうです。聴きたかった。

ティルソン・トーマスは、自分がひいきにする野球チームの選手のプレーや監督の采配について、皆が関心をもって、あれこれ話題にするようにオーケストラもなれればと考えているそうです。それでファミリーコンサートやKEEPING SCOREの構成が、オーケストラメンバーにスポットライトをあてたものになっているのでしょう。オーケストラの中にアンチMTTはいないくらいメンバーからの支持があると取材している記事がありました。

ティルソン・トーマスはサンフランシスコ交響楽団との今が20歳以降でもっとも幸せだと感じるそうですが、MTTがいなくなったらサンフランシスコ交響楽団はどうなるのか?それでも人々を吸引することができるかで、クラシック音楽の力が試されると結んでいる記事がありました。
ティルソン・トーマスのかもす雰囲気から、わが家ではしばしばMTTサイボーグ説が流れ、「普通の人みたいに食事するのか?」という疑問がささやかれたりしていたのですが、なんと彼は料理好きだったのです。

サンフランシスコにやって来た私は、サンフランシスコ交響楽団についての記事を探すべく図書館に向かいました。すると、出てきました。「Bon Appetit」というグルメ雑誌で真っ赤なエプロンをかけてにっこり笑っているMTTが。

彼の両親が料理好きだったこともあって、ティルソン・トーマスは小さいころからキッチンで料理をすることが多かったそうです。子どものころの思い出に残っている料理は、たくさんのきのこが玉ねぎなどと入っているトマトソースのスパゲッティ(日本でいうところのナポリタン?)だそうです。

得意料理はリゾットとオリジナルのストックでつくるスープとのこと。レシピは使わず感覚でつくるので同じものを二度はつくれないそう。いつもマーケットで食材を見ておいしそうだと思ったものを買い、後でそれで何をつくるか考えるそうです。

仕事で行き詰ったときも、キッチンに入ると気分転換できると話していましたが、これは料理を趣味にする人に共通する意見だと思います(私もそうです)。

それにしてもアメリカの図書館に初めて入りましたが、使いやすくてびっくりしました。新聞でも雑誌でもデータベースが整備されていて、パソコンで記事を簡単に探して読むことができます。ライブラリアンも各フロアに何人もいて、何でもすぐに教えてくれます。雑誌のバックナンバーの所蔵の仕方もきれいでわかりやすい。観光しないで毎日図書館に行こうかと思うくらいパラダイスです。
LAフィルのコンサート2回目(6/3)は、「The Shadow of Stalin」の一連のフェスティバルと2006−2007シーズンの最後を飾る、プロコフィエフの「アレクサンダー・ネフスキー」を映画に合わせて演奏するというコンサートです。こういう企画は初めてだったので、とても楽しみにしていました。

開演1時間前から45分のプレトークがありました。ホール内の吹き抜けのアトリウムに椅子が並べられ、そこでロシア音楽が専門の音楽学者の人が話しました。サンフランシスコ交響楽団のプレトークも音楽学者の方が中心となっていますが、アメリカのオーケストラは、たいていプレトークは音楽学者が登場します。彼らが研究の成果をふまえて、多くの人の前で話をするということは、とても意義があると思います。日本でもそういう機会が増えるとよいのにと、多くの音楽学者の先生方と諸先輩に囲まれて大学生活を送った私は心から思いました。

話の内容は、当時の社会的な背景(創作活動の内容がコントロールされていたことなど)と映画についてが中心でした。当時プロパガンダ用に作られたアニメーションの上映もあって面白かったです。

プレトークの後は、いよいよ映画の上映です。舞台上には大きなスクリーンと4つのスピーカーが配され、指揮台の前には、映画が映るモニターと大きな時計がセットされています。今日はお客さんも満員です。

コンサートは、プロコフィエフの音楽だけを抜いた映画を上映し、それにサロネン&LAフィルが生演奏をつけるというもの。ストーリーは、極悪非道(という設定)のドイツ軍を、若くてイケメンなアレクサンダー・ネフスキー率いるロシア軍がやっつけるといういかにもなものなのですが、プレトークで「この映画を見たことある方?」と聞いたら、相当数手が挙がっていました。ハリウッドがある街は違います。

セリフはあまり多くないのですが、セリフの後に音楽が始まる度に私はハッとしていました。音がきれいで。どんなに鳴らしても音がきれいです。今日の曲は前回のコンサートと違って叙情的な部分も多かったのですが、非常に聴かせていました。合唱のPacific Choraleもうまかったです。アメリカのお客さんは、映画の細かいところまで声に出して反応し、ストレート。

映画に合わせて演奏するのは、難しかったのではないでしょうか。戦いの準備が進んでいく場面で、音楽も加速していくのですが、馬が駆ける蹄の音と音楽が、加速するさままでぴったりでした。さすが。

文句なしの大ブラボーで、こんなに面白い企画を体験できてラッキーでした。

サンフランシスコ交響楽団の話でも私はこのブログに何度も書いていますが、クラシック音楽ファンを増やすためには、音楽的な魅力とプログラミングなどの企画力以外にはないとあらためて思ったコンサートでした。
ウォルトディズニーコンサートホールは、併設レストランの「PATINA」も自慢で、LAフィルのウェブサイトでもダイニングのコーナーは大きく紹介されています。私はずっとこのレストランが気になっていたので、6/3のコンサートの前にランチに行きました。コンサートホールのダイニングのご参考に、ここでどんなレストランでどういうお料理だったのかをご紹介します。

お店のインテリアは、シンプルな木の茶色と白がベースになっています。

一皿目


一皿目、私はアスパラガスのデュオというのをオーダーしました。どうかなと思ったのですが、ホワイトアスパラガスはフレッシュではありませんでした。味付けはピーナッツオイルとビネガーでシンプル。上に泡立てたクリーム系のものがのっていたのですが、生クリームよりも軽い味です。一皿目は他のメニューも野菜料理が並んでいました。


二皿目


二皿目はまぐろのプレートにしました。写真ではわかりづらいのですが、ハワイのアヒと同じ感じでまわりを軽くあぶってあります。味はあら塩とブラックオリーブを細かく砕いたものがベースになっていて、それにプチトマトとちょっとサルサっぽいスパイシーなトマトソース、半熟卵を合わせて食べるというもの。日本だったら絶対温泉卵だろうと思いましたが、アメリカに温泉卵はないのでしょうか?


デザート


デザートは、レモンのタルト、トマトのソルベ、ミックスベリー、飾りにメレンゲを板状に焼いたものがのっていました。

全体的にライトで野菜が多い。いまどきのアメリカのレストランは、大味なものがドカンと出てきたりしないのですね。一皿の分量も日本で食べるのと変わらないです。周りの肉料理を食べていたお客さんのプレートもヘビーな感じはありませんでした。デザートにいろいろなものが少しずつのっているところなど、日本の影響に違いありません。

カリフォルニアっぽいフュージョン料理で、感動するほどではありませんが、味の組み合わせに無理がなくて楽しめます。コンサートホールとセットでおすすめです。
サンフランシスコ交響楽団以外のオーケストラはどうなのか?それを知らずしてサンフランシスコばかりを語るというのはいかがなものか?ということで、やって来ましたロサンゼルス。今回は、サンフランシスコでMTTのマーラーの7番を聴くことと、サンフランシスコ交響楽団のマネジメント部門の方にお会いして話を伺うことが主な目的ですが、その前にロサンゼルスに寄りました。街が大きいです。

ウォルトディズニーコンサートホール


ウォルトディズニーコンサートホールの姿は、写真で見ていたとおり個性的でインパクトがあります。

注目はLAフィルストア。今まで見たどこよりも商品もディスプレイもおしゃれでハイセンス。とても楽しい空間です。

LAフィルストア


ホールの中は、これまた個性的なパイプオルガン。客席が舞台を取り囲んでいるのですが、その造りも斬新な感じがします。

今日(6/1)のプログラムは、「The Shadow of Stalin」という5月からクロスオーバーかつ多面的に展開しているフェスティバルの中の一つです。「鉄のカーテンの向こう側」というタイトルで、ソ連の体制の影響をもろに被った国の作曲家リゲティ、フサ、ルトスラフスキーの作品を取り上げるというもの。

最初に今回のフェスティバルの趣旨が理解できるショートフィルムの上映があって、その後演奏が続きます。

サロネンはマイクを持って登場。一曲目のリゲティは、終わったと思ったら続きがある曲だというお断りをしていました。こういうの、ウィーンでハンプソンも拍手しないでって即刻言ってましたけれど、はっきり言った方がいいと思います。その方が安心して集中できるし。

LAフィル、うまいです。サンフランシスコは、いわば100人のMTTがいるかのような演奏が特徴ですが、こちらはもっと自由闊達な感じがします。木管の音もとてもきれい。

ホールの音響は、噂どおりの素晴らしさです。打楽器の音が一つ一つクリアに聴こえるなんて初めて。抽象的に音がいいのではなく、このオーケストラのサウンドに最適化されて音がいい感じがしました。

二曲目のフサでは、作曲家のフサ氏ご本人も登場。最初にサロネンと作曲の経緯などについてのトークがありました。作曲家は曲を書くところまでで、それを実際の音にするのは演奏家の創造によると語ったフサ氏。LAフィルの演奏は本当に素晴らしく、曲が終わったとたんにスタンディングオベーションでした。こういうのを作曲家冥利に尽きるというのだろうと思います。

三曲目のルトスラフスキーも家で他の演奏によるCDを聴いたときは、何だかという感じだったのですが、全然つまらなくない。とても刺激に満ちていましたし、最後もありえないくらい決まってフィニッシュ。

サロネンはいちいち颯爽としていました。今日の三曲はどれも曲の傾向が似ていたので、活力があるのと明晰なことの他に彼が何を持っているのかは、もっといろいろ聴いてみないとわからないと思いましたが(私はライブを聴いたのは今回が初めてだったのです)。

LAフィルはお客さんのマナーもいいし、私のまわりに座っていた方たちも(たまたまだったのかも知れませんが)音楽に対するレベルが高いように感じました。

マネジメントの面で思ったのは、今回通常の定期公演とは別のフェスティバルだったこともあるのかも知れませんが、お客さんの入りが8割くらいだったこと。プログラムなどでのスポンサーや支援者の表示や集客などの点で、サンフランシスコに比べると詰めが甘い感じがしました。やはり経営的な部分でサンフランシスコ交響楽団は特筆すべきものがあると思います。

とは言っても、LAフィルは非常にハイレベルです!

[プログラム]
リゲティ
Concert Romanesc
フサ
Music for Prague 1968
ルトスラフスキー
Concert for Orchestra
プロフィール
 

潮 博恵

Author:潮 博恵
MTT&SFSの音楽センスと革新的な活動に感銘を受け、ブログを開設。

【続・徹底研究】ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団で、よりわかりやすく彼らの活動と最新情報をご覧いただけます
続・徹底研究MTT&SFS


著作権分野の英文契約書作成等の行政書士をやっています。
うしお行政書士事務所

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