ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のKEEPING SCORE ラジオ版の放送が、いよいよ4/1から始まります。

まずは、地元ベイエリアのFM局からなのですが、American Public Media と組んでいるので、全米で放送される模様。インターネットラジオでも聴けることを願っています。

このラジオ版は、「The MTT Files」というタイトルで、1時間番組が8回シリーズ。毎回テーマに応じて、MTTと交友のあるゲストを招いて、MTTとのトークと音楽で構成されます。

ハイライトは、ジェームズ・ブラウンがゲストの回。亡くなる少し前に収録が済んでいたとのこと。本当に貴重だと思います。

各回の主な内容は、次のとおりです。

第1回 これは音楽と呼べるか?
音楽とノイズの境目は何か?ゲストは、現代音楽の作曲家Steven Mackey。

第2回 アメリカ音楽とは? その1
コープランドの初期のあまり知られていない女声コーラス作品「不道徳」(すごい曲名!)を素材にして探る。

第3回 アメリカ音楽とは? その2
コープランドのモダニズムからポピュリズムへの変遷とその背景について。彼の交響詩をニューワールド交響楽団とのリハーサルから取り上げる。

第4回 ストラヴィンスキーの著作権ブルー
ストラヴィンスキーが「火の鳥」で大成功したにもかかわらず、著作権が保護されていなかったためにお金に苦労した話。「火の鳥」の自動演奏楽器版を取り上げる。

第5回 最後のヴィルトゥオーゾ
ヤッシャ・ハイフェッツを題材に超絶技巧とは何か、どうしたら会得できるのかを探る。彼と同じ楽器を現在使用している、サンフランシスコ交響楽団コンサートマスターのAlexander Barantschikと共に。

第6回 フロイトとバレエ
舞踊家ナタリア・マカローヴァをゲストに、心理的なものを音楽がどう取り込んだかについて、「ジゼル」とそれ以後を対比させて取り上げる。

第7回 演奏するのはブーレーズ、でも聴くのはジェームズ・ブラウン!
現代音楽に傾倒していた大学時代に、ジェームズ・ブラウンを聴いて、音楽観が変わったというMTTの彼へのインタビューを中心に。

第8回 五世代を越えて
MTTがピアノを師事したジョン・クラウンは、遡っていくとローゼンタール・リスト・ツェルニー・ベートーヴェンへと続くことから、教師が技術面などだけでなく、音楽的な思想を次の世代へ受け継がせるにはどうすべきかを探る。

American Public Mediaの The MTT Files ウェブサイト
KEEPING SCORE ラジオ版ウェブサイト
ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の、KEEPING SCORE「春の祭典」のドキュメンタリーが、第47回ローズドール賞(Rose d‘Or)のベストアーツドキュメンタリー部門にノミネートされました。

Keeping Score: Rite of Spring Keeping Score: Rite of Spring
Stravinsky、Sfs 他 (2006/11/14)

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これは、1961年にスイスで創設された、世界で最も権威あるテレビ祭の一つだそうです。アメリカから選ばれたのは、40ヶ国が参加しての64ノミネートの内、KEEPING SCOREだけだったとのこと(発表は5/9)。

昨秋のKEEPING SCOREのテレビシリーズは、300万人以上が視聴したと紹介しましたが、ヨーロッパや中国(!)でも既に放送されたとのこと。

未放送のスペイン・スウェーデン・チェコでも放送が決定しているそうです。

日本は?

日本でもぜひ放送して欲しいです。音楽の内容に真正面から切り込んでいて、なおかつエンターテインメントとして楽しめる作品です。

クラシック音楽の裾野を広げるとか、音楽の魅力を伝えるとはどういうことなのか?今やこの最先端の活動を見ずには語れません。

ローズドール賞(Rose d‘Or)ウェブサイト
サンフランシスコ交響楽団のKEEPING SCOREの教育プラグラムの様子が、動画で見られるようになりました。

主要教科の授業で、表現やコミュニケーションの幅を広げるために音楽を効果的に用いる試みが、実際に見られます。

例えば、ベートーヴェンの運命を聴いて、ベートーヴェンの心情を想像して彼の肖像画に色をぬることと、文章を書くことを組み合わせるとか、コープランドの音楽と彼が伝えようとしたことを多面的に扱ったもの。学年が上になると、パソコンを使って音楽を創る授業など。

先生たちへの研修の様子やインタビュー、シンフォニーのメンバーや教育プログラム担当者のコメントもあります。

非常に興味深い内容になっています。私も参加してみたいです。

こちらのKEEPING SCOREの教育プログラムウェブサイトで見られます
KEEPING SCOREの教育プログラムについて過去の記事


次のテレビシリーズの放送は、2009年。

とり上げるのは、ベルリオーズ(幻想交響曲・レリオ)・ショスタコーヴィチ(交響曲第5番)・アイヴス(New England Holidays Symphony)。

映像化に向けて、2007シーズンのコンサートから撮影していくそうです。

次回の映像を見られるまで時間がありますが、制作するのに非常に時間がかかりそうな(特にウェブ)作品なので、仕方ないです。

楽しみに待ちましょう。

教育プログラムの方は、北部のソノマ地区に対象地域を拡大するとのこと。

ところで、2006年秋に放送したテレビシリーズは、300万人以上のアメリカ人が視聴したそうです。

割合はよくわからないですが、絶対数で300万人は大きいと思います。ティルソン・トーマス(MTT)が冗談のひとつも言わずに、ひたすら音楽について語りまくったあのドキュメンタリーを見た人が300万人もいるなんて!

サンフランシスコでライブを聴ける人数は限られているし、CDもSACDで値段が高いことを考えると、多くの人がアクセスできるテレビという媒体を使ったことの影響は非常に大きいと思います。
KEEPING SCOREは、ドキュメンタリーを観て、ライブ演奏を聴いて、ウェブサイトを見て「面白かった」で終わるプロジェクトではありません。

その先に、教育とコミュニティプログラムが広がっているのです。

教育プログラムとはどのようなものか、ウェブサイトを見てみると、私たちが一般にイメージするものとは発想が違っていて、新鮮な驚きです。

音楽そのものを教えるのではなくて、主要教科を学ぶ際に、音楽をコミュニケーションや感情表現の能力を高めるための手段として取り入れようというものなのです。

そして彼らは、まず学校の先生を対象に、これら音楽を教育手段に取り入れる方法を学ぶ研修を行っています。例えば、

<国語>
● 音楽を聴いて、それをどう聴いたかについてプレゼンテーションすることで、批評する力とコミュニケーション能力を養う。
● いろいろな音楽を聴いて、それを3つのジャンルに分けてみるという作業を通して分析力を養う。
● ベートーヴェンの運命の音楽、その時代の歴史、ベートーヴェンの年譜の3つを素材に物語を書いてみる。
<歴史と社会>
● アメリカの歴史を学ぶときに、その固有の音楽を打楽器を用いて体験する。
● 奴隷制度を学ぶ際に、奴隷の境遇を想像するためのツールとして、奴隷たちに起源がある音楽を用いる。
<算数と理科>
● 分数を学ぶときに、リズムの記譜法とその演奏の仕方のしくみを取り入れる。
● 太陽系のしくみとか各惑星の特徴を考えるときに、何に着目するかという視点を養うための素材として、ホルストの惑星における惑星毎の音楽の違いを用いる。
<芸術>
● 音楽と美術における「線」の概念とはどういうものか考える。
● コープランドの「common man」を聴いて、楽器の構成や和声の変化によって、自分の感情がどう変化したかを観察する。

というような内容なのです。面白そう。

アメリカでは、美術も同じように主要教科の理解に役立てるために用いられている模様。サンフランシスコ交響楽団には、教育プログラムの専門スタッフが4人もいる上に、他の機関との連携も進んでいるようです。

コミュティプログラムの方の詳細は、今後発表される予定です。

KEEPING SCORE ウェブサイト
お薦めポイント。

【チャイコフスキー 交響曲第4番】
マーラーのCDを聴いて、「どうしたらこんな演奏ができるのか?」と思った方はぜひ。彼らの活動ぶりも知ることができます。
Keeping Score: Mtt on Music Keeping Score: Mtt on Music
San Francisco Symphony、Thomas 他 (2005/03/08)

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【ベートーヴェン 英雄】
彼らの音楽的実力をはかりたい方。堂々と受けて立ちましょう!
Keeping Score: Eroica Keeping Score: Eroica
Beethoven、Sfs 他 (2006/11/14)

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【ストラヴィンスキー 春の祭典】
音楽と映像の楽しさではコレ。クラシック音楽の魅力を伝えるというテーマに関心のある方にも。
Keeping Score: Rite of Spring Keeping Score: Rite of Spring
Stravinsky、Sfs 他 (2006/11/14)

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【コープランド】
感動したい方に。社会にとってアーティストの果たす役割についても考えさせられます。
Keeping Score: Revolutions in Music Keeping Score: Revolutions in Music
Copland、Sfs 他 (2006/12/12)

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ここまで来たら、是非ともマーラー編をやってほしい。
ティルソン・トーマス(MTT)の口から、今回のマーラーシリーズの音楽づくりに対する思いが語られる様をこの目で見たい!

このプロジェクト、5年がかりらしいが、起算点はいつ?
チャイコフスキーの2004年からカウントすると2008年までになるから、あと1回くらいは今回のような規模でできるかも。

ちなみにサンフランシスコ交響楽団のウェブサイトでは、KEEPING SCOREプロジェクト継続中につき、寄付募集中です。
目に付くところをあげれば、
●ティルソン・トーマス(MTT)は語りがうまい。
●淀みなくずーっとしゃべっている。
●彼のピアノは一瞬にして作品のエッセンスを表現してしまう。
など、いくらでもありますが、それよりも強く伝わってくるのは、次のような彼の信念です。

演奏というのは、過去の偉大な作品に命を吹き込むことであり、それによって作品は今の時代に生きることができる。
そしてそれはアーティストだけでなく作品を聴いてくれる人々が存在してはじめて実現できるものである。
これらの伝統は、次の世代に受け継いでいかなければならない。


このシリーズ、ドキュメンタリーとライブ演奏がセットになっていますが、これはうまいと思います。ドキュメンタリーによって音楽がより理解できる上、ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の生き生きとした演奏で、クラシック音楽の魅力も彼らのメッセージもビビッドに伝わってきます。

今回のシリーズは、もともとテレビ番組用に制作されたものですが、いったいどれくらいの人が見たのでしょう?

アメリカは日本よりもチャンネル数が多いし、人々の好みも多様化している。それでも音楽に真正面からアプローチしつつ楽しめるものを作った点は評価できると思います。

日本でもどこかの放送局が放映権を買い取り、多くの人が見てくれたら良いのに。それだけのクオリティとエンターテインメント性があると思います。
第三回はコープランドと彼が生み出したアメリカ音楽です。
Keeping Score: Revolutions in Music Keeping Score: Revolutions in Music
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コープランドは、始めは前衛的な音楽に傾倒する。しかし、大恐慌と戦争という社会的な影響から、次第に社会とアーティストの関わりを考えるようになり、多様なアメリカ人皆が共有できる音楽とは何かを探求する。そして最後に、シンプルな音楽に至るという過程を辿る内容。

音楽を実際に聴きながらその変遷を辿っていくのが非常に興味深いし、最後に奏でられる「アパラチアの春」とコープランドの姿が、一人の芸術家の生き様として圧倒的な迫力です。

アメリカ音楽を伝承するという観点と、社会にとってアーティストの果たす役割を考えるという点から、今回コープランドを採り上げたのだと思われます。

ドキュメンタリーに続く演奏は、「アパラチアの春」のオリジナルバージョンで、13人で演奏されています。コープランドが辿り着いた境地をたっぷり堪能できます。

ウェブ版の方は、コープランドの人生をいくつかの時代に分け、年代ごとにより詳しく社会背景や音楽を辿ることができます。本人の資料も多く残っており、充実した内容。

keeping scoreウェブ版

今回は、ティルソン・トーマスが前衛的な音楽をピアノで弾くシーンがいっぱいありますが、見事なはまりっぷり。トーンクラスターのセンスだけでも見て損はないくらい。
ウェブ版は、作品への歴史的アプローチとスコアの2つで構成。

歴史的アプローチの部分は、ストラヴィンスキーを中心に、「春の祭典」を創り上げた4人の人物の歩みと、それが「春の祭典」に集結していく流れがタイムラインによって表示され、それぞれを詳しく見ることができるようになっています。

写真や絵が多いので、ビジュアル的にも当時の雰囲気を感じることができます。

スコアの方は、バレエの映像を見ながら音楽が聴けるようになっており、ドキュメンタリーで採り上げたメロディーやリズムなどの要素と拍子がビジュアルで表示されるというもの。

そして今回のスペシャルは、マイケル先生の指揮レッスン!

最後に採点と評価まで出ます。

keeping score ウェブ版
これは徹底的に魅せるつくりで楽しい。
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次々と切り替わる画面、ぐるぐる回るカメラ、斜めの映像にも、見ているうちに慣れます。

これらの狙いは、ドキュメンタリーで説明した、どの音をどの楽器に割り振っているかとか、どの楽器のコンビネーションでリズムを形成しているのかという点を、画面を見ながら音を聴くことでリアルに感じとってもらうということ。

魅せる演出では、第一部の終わり〜ドラムの連打ソロ→マイケル左ストローク→指揮者の背後からオケ全体を映す→ものすごい勢いの弦楽セクション→マイケル決めのポーズ→残響を止める打楽器奏者の気迫「オレたちはこれに命を懸けている」で終わる〜という一連の流れが最高。

演奏は、何か一部分を強調したりしないバランスのとれたもの。リズムの躍動感にあふれるティルソン・トーマス(MTT)ワールドです。
第二回は、ティルソン・トーマス(MTT)お得意の「春の祭典」です。
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ドキュメンタリーは、ティルソン・トーマスの旅と、パリでの初演のエピソードを中心に、音楽を第一部から紹介していく流れになっていて、バレエの映像も組み合わされています。

旅で訪れるのは、ストラヴィンスキーがリムスキー=コルサコフから作曲を学んだサンクトペテルブルグと民族的な歌や踊りのヒントを得たウスティルグ、作品が初演されたパリの三ヶ所。

美しいサンクトペテルブルグの映像に合わせた音楽のセンスが抜群だし、初演の舞台となった劇場や当時のポスターなどもおしゃれ。 

音楽の内容面でのテーマは、ストラヴィンスキーが採用した音楽的素材やリズム、オーケストレーションなどがいかに当時の常識からはずれていて衝撃的であったかという点。

テンポよく進むのであっという間の印象。
プロフィール
 

潮 博恵

Author:潮 博恵
MTT&SFSの音楽センスと革新的な活動に感銘を受け、ブログを開設。

【続・徹底研究】ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団で、よりわかりやすく彼らの活動と最新情報をご覧いただけます
続・徹底研究MTT&SFS


著作権分野の英文契約書作成等の行政書士をやっています。
うしお行政書士事務所

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